【連載】世界の療法アプローチ 第9回|カテゴリー:世界の伝統医学
この記事は情報提供を目的とした連載コラムです。漢方薬も薬です。使う際は必ず主治医や薬剤師にご相談ください。
この記事でわかること
- 漢方薬「抑肝散(よくかんさん)」とは
- パーキンソン病のどんな症状に役立つといわれるか
- 研究で報告されていること
- 使ううえでの注意
1. 日本になじみの深い漢方
これまでインドや中国の伝統医学を紹介してきました。今回は、日本で広く使われている漢方に目を向けます。抑肝散は、その名のとおり高ぶりを鎮める働きがあるとされる漢方薬で、7種類の生薬を組み合わせてつくられます。イライラや不眠、興奮などに用いられてきました。
漢方は日本の医療にしっかり根づいていて、抑肝散は病院で処方され、保険も使えます。伝統の知恵でありながら、身近に手が届くのが特徴です。
2. パーキンソン病のどんな症状に
パーキンソン病には、手の震えや動きにくさといった運動の症状だけでなく、気分の落ち込み、不安、不眠、ときに幻覚といった、心や神経の症状(非運動症状)もともないます。抑肝散が役立つと期待されているのは、おもにこの非運動症状の部分です。
3. 研究で報告されていること
複数の施設で行われた研究では、抑肝散を使った患者さんで、運動症状は悪化せず、精神面の症状を評価するスコアが改善したと報告されています。また、抑肝散そのものを標準の薬と組み合わせることで、薬の効く時間をのばしたり、不随意運動がやわらいだりしたという報告も、少数ながらあります。ただしこちらはごく少人数の症例報告にとどまり、まだ確かなことは言えません。
「運動症状そのものを大きく改善する」というより、「つらい非運動症状をやわらげ、日々を過ごしやすくする」方向で期待されている、と受け止めるのがよさそうです。
4. 使ううえでの注意
漢方は「自然のものだからやさしい」と思われがちですが、抑肝散も立派な薬です。
- 自己判断で始めない。体質や、いま飲んでいる薬との組み合わせを見て使う必要があります。医師・薬剤師に相談を。
- 甘草(かんぞう)による影響に注意。抑肝散に含まれる生薬の影響で、まれに血圧やむくみ、体のだるさに関わる変化が出ることがあります。気になる症状が出たら受診を。
- いまの治療はやめない。漢方は組み合わせて使うもので、標準治療の代わりではありません。
まとめ
- 抑肝散は、日本で処方され保険も使える、なじみ深い漢方薬。
- おもに不安・不眠・興奮などの非運動症状をやわらげる方向で期待されている。
- 漢方も薬。自己判断せず、主治医・薬剤師に相談してから使う。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的とした連載コラムであり、特定の療法を推奨・保証するものではありません。効果や安全性には個人差があります。漢方薬の使用や治療内容の変更は、自己判断で行わず、必ず主治医または薬剤師にご相談ください。
参考にした主な情報
・抑肝散とパーキンソン病(北里大学 東洋医学総合研究所ほか)