症状別セルフケアの工夫

症状別セルフケアの工夫
この記事は、日々の暮らしで試せる工夫をまとめた情報です。症状がつらいときや薬の調整が必要なときは、主治医にご相談ください。

この記事でわかること

パーキンソン病の、暮らしに関わりやすい症状ごとに、家庭でできる工夫をまとめました。気になる項目から読んでください。無理をせず、合わないと感じたら中止し、困ったときは専門職に相談することが大切です。

便秘

便秘は、運動症状より早く出ることもある、よくある悩みです。まずは生活の見直しから。

  • 水分をこまめに(1日6〜8杯を目安に)。朝いちばんの温かい飲み物が刺激になります。
  • 食物繊維(野菜・果物・全粒穀物・豆)と発酵食品をふやす。
  • 体を動かす。歩く・体操するだけでも腸は動きます。
  • 毎朝トイレに座る習慣をつける。前かがみの姿勢や足台も助けになります。

それでも改善しないときは、主治医に相談します。

立ちくらみ(起立性低血圧)

立ち上がったときに血圧が下がり、ふらつく症状です。転倒につながるので、あわてず対処を。

  • 急に立ち上がらない。寝ている→座る→立つ、と段階を踏む。
  • こまめな水分と、医師と相談のうえで塩分を調整。
  • 弾性ストッキングで足に血液がたまるのを防ぐ。
  • 症状は薬の影響で強まることもあるため、気になれば医師に確認を。

すくみ足・歩きにくさ

一歩目が出ない、足が床に貼りつくように感じる「すくみ足」には、きっかけ(キュー)づくりが役立ちます。具体的には次のような方法があります。

  • 聴覚キュー — 「1、2、1、2」と声に出す、メトロノームアプリのリズムに合わせて歩く。一定のテンポが、止まった足を動かすきっかけになります。
  • 視覚キュー — 床に貼ったテープの線をまたぐ、タイル目地を目印にする。普段の歩幅より少し広めの間隔に印をつけると、大股で歩く練習になります。旅行用のキャリーケースを目印代わりに前に置いて歩く、という工夫をされる方もいます。
  • 方向転換は大きく — 小回りせず、弧を描くように回る。
  • あせらない — すくんだら、いったん止まって仕切り直す。「1、2、3」と数えてから踏み出すのも有効です。

不随意運動(ジスキネジア)

レボドパを長期間使用するうちに、体が意図せずくねくねと動く「ジスキネジア」が現れることがあります。薬が効いている時間帯に起こりやすいとされ、パーキンソン病そのものの症状というより、治療の経過にともなって生じるものです。

  • いつ、どの程度の強さで起こるかを記録し、主治医に伝えます。薬の量や服薬のタイミングを調整することで、軽減できる場合があります。
  • 転倒につながることがあるため、家具の配置など周囲の安全にも注意します。
  • 周囲の視線を気にして外出を控える方もいますが、治療の過程で起こりうる症状であり、珍しいものではありません。

薬の効きにムラがある(ウェアリングオフ)

レボドパの効果が続く時間が短くなり、次の服薬前に症状が強く出る状態を「ウェアリングオフ」と呼びます。発症から数年が経過すると現れやすくなるとされています。

  • 症状が強くなる時間帯を、服薬記録アプリや手帳に記録しておくと、主治医との相談がスムーズになります。
  • 薬の調整によって和らげられることがあります。自己判断で量を増やさず、主治医に相談します。
  • 症状が強い時間帯は、予定を詰め込みすぎない、休める場所を確保しておくといった工夫も助けになります。

よだれ(流涎)

唾液の量そのものが増えるというより、飲み込む回数が減ることで、口の中に唾液がたまりやすくなって起こります。ご本人は気づきにくく、周囲から指摘されて気づくこともあります。

  • 意識して、こまめに唾を飲み込む習慣をつける。
  • あごを軽く引いた姿勢を保つ(うつむきすぎると唾液がこぼれやすくなります)。
  • ガムをかむ、飴をなめるなど、口を動かす機会を増やす。
  • 改善しない場合は、主治医に相談を。

書く文字が小さくなる(小字症)・表情が乏しくなる(仮面様顔貌)

字がだんだん小さくなっていくのは、動作全体が小さくなる症状の一部です。書くときに「意識して大きく」書く練習が役立ちます。マス目の大きい用紙を使う、太いペンに変えるといった工夫も効果的です。

また、表情が乏しくなる「仮面様顔貌」は、ご本人の気持ちが乏しいわけではなく、表情筋の動きが小さくなることで起こります。「怒っているのかな」「元気がないのかな」と周囲に誤解されやすいので、ご家族や周囲の方には、これも症状のひとつだと知っておいていただけると、お互い安心です。鏡の前で口や頬を大きく動かす練習も、表情のこわばりをやわらげる助けになります。

睡眠の問題

  • 起きる・寝る時間を一定に。日中は日光を浴び、体を動かす。
  • 夕方以降のカフェインを控える。
  • 大声の寝言や体が動くレム睡眠行動障害は、けがの原因にもなるため主治医に相談を。

気分の落ち込み・意欲の低下(うつ・アパシー)

「気分が沈む・つらい」というのは、うつの症状です。一方で、悲しさや辛さは感じていないのに、何にも興味がわかず、自分から動く気力が出ない、という状態を「アパシー」と呼びます。パーキンソン病では3〜4割程度の方にみられるとされ、うつとは別に起こることがある、独立した症状です。

この2つは、周囲から見ると「やる気がない」と同じように見えますが、対応が異なります。うつはご本人がつらさを自覚していることが多いのに対し、アパシーはご本人が「困っている」という自覚を持ちにくいのが特徴です。「怠けている」のではなく、症状として起こっていることを、ご本人にもご家族にも知っておいていただきたいところです。ひとりで抱えず、主治医に伝えてください。日光を浴びる、体を動かす、人と話す、といった習慣も支えになります。友の会のカフェや集まりも、気持ちを軽くする場になります。

疲労感

体を動かしていなくても感じる、説明のつきにくい疲れは、パーキンソン病の方の4割ほどが経験するといわれる、よくある症状です。「昨日はよく眠れたのに、なぜか体がだるい」という状態が起こりえます。無理をして予定を詰め込みすぎず、日中に短い休憩を計画的にとる、活動量が多い日と少ない日で緩急をつける、といった工夫が助けになります。

認知機能の変動

「さっきまでは頭がすっきりしていたのに、急にぼんやりする」というように、認知機能が時間帯によって変動することがあります。薬の効き具合や、疲労、時間帯と関連することが多いようです。調子のよい時間帯に大事な用事を済ませる、変動のパターンをメモしておいて主治医に伝える、といった対応が役立ちます。急激な変化や、日によって差が大きい場合は、他の原因(脱水や感染症など)が隠れていることもあるため、早めに相談してください。

排尿の悩み

急に強い尿意を感じる、トイレの回数が多いといった症状も、自律神経の乱れからよく起こります。夜間の頻尿は転倒のリスクにもつながるため注意が必要です。

  • 夕方以降の水分・カフェイン・アルコールを控えめに。
  • 夜間はベッドサイドにポータブルトイレを置くなど、移動距離を短くする工夫を。
  • 改善しない場合は、泌尿器科への相談も選択肢です。

飲み込みにくさ・むせ

  • 一口を小さく、ゆっくり。飲み込んでから次の一口へ。
  • 汁物やお茶でむせる場合は、とろみをつける。
  • 食事はあごを軽く引いた姿勢で。
  • むせが続くときは、言語聴覚士に相談を。

声が小さい・聞き取りにくい

声が小さくなるのも、よくある症状です。意識して大きく話す練習(LSVT LOUDなど)が役立ちます。深呼吸をして、しっかり息を使って話しましょう。専門的な訓練は言語聴覚士が指導してくれます。

痛み・こわばり

  • 朝や薬の切れ目にこわばりが出やすい。ゆっくりストレッチを。
  • 温めると楽になることがあります。
  • 薬の効き方と関係することもあるため、痛みのパターンを記録して主治医に伝えると調整に役立ちます。

転倒の予防

  • 家の中の段差・コード・滑りやすい敷物を片づける。
  • 手すりや十分な明るさを確保する。
  • あわてない。ものを持って歩くより、まず安全に移動することを優先。

入院・外出時に備えておきたいこと

意外と知られていませんが、パーキンソン病の薬は、飲む時間が数十分ずれるだけで症状が崩れることがあります。入院や外出先で急にお薬の時間を伝えられなかった、ということがないよう、次の備えをおすすめします。

  • ふだんの服薬時間・薬の名前を記したメモやお薬手帳を、常に携帯する。
  • 旅行や外出時は、渋滞や待ち時間を見込んで、薬を多めに(予備を)持っていく。
  • 入院時は、正確な服薬時間を医療スタッフに伝え、可能であれば自己管理での服薬について相談する。

運動・リハビリ

運動は、これらの症状の多くにまとめて効く「土台のケア」です。週に合計150分を目標に、「大きく動く」意識で。理学療法士・言語聴覚士など専門職と、安全に計画を立てて続けましょう。太極拳・気功・ダンスなど、楽しく続けられる方法は連載でも紹介しています。


免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の治療・指導に代わるものではありません。症状がつらいとき、薬の調整が必要なときは、必ず主治医にご相談ください。

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