【特別連載】西洋医学の”今”と”これから” 第6回
この記事は情報提供を目的とした連載コラムです。手術をともなう治療であり、適応があるかどうかは主治医・専門医との相談が必要です。
この記事でわかること
- 脳深部刺激療法(DBS)とは何か
- 「適応型DBS」で何が変わったのか
- 2025年の承認と、治験で示されたこと
- 従来のDBSとの違い、知っておきたい注意点
1. 脳深部刺激療法(DBS)とは
DBSは、脳の深い部分に細い電極を植え込み、胸などに埋め込んだ装置から電気刺激を送ることで、ふるえや動作の遅さといった症状をやわらげる手術治療です。薬で十分な効果が得られなくなった患者さんの選択肢のひとつとして、長年使われてきました。
ただ、従来のDBSには弱点がありました。刺激の強さは、あらかじめ決めた一定の設定で送り続けるため、症状が強い時間帯にも、比較的落ち着いている時間帯にも、同じ強さの刺激が送られてしまいます。
2. 「適応型」という進化
この弱点を解決しようとするのが、適応型DBS(aDBS)です。植え込んだ電極そのものから脳の活動をリアルタイムで読み取り、症状の強さに合わせて、刺激の強さを自動的に調整します。いわば、脳の状態を見ながら、刺激を「賢く」出し入れする仕組みです。2025年2月、米国のメドトロニック社の製品(BrainSense Adaptive DBS)が、この方式として世界で初めて米国FDAの承認を受けました。
3. 治験で示されたこと
ADAPT-PDと呼ばれる治験では、適応型DBSを使った患者さんで、不随意運動(ジスキネジア)に悩まされずに調子よく過ごせる時間が増え、必要な刺激の総量は少なくてすみ、生活の質(QOL)のスコアも良くなったと報告されています。「一定の強さで刺激し続ける」よりも、「必要なときに、必要な分だけ」のほうが、体への負担が少なく、効果も安定しやすい、ということが示された形です。
4. 知っておきたい注意点
適応型DBSも、土台になる技術は従来のDBSと同じ、脳への手術をともなう治療です。全身麻酔や開頭をともなう手術のリスク、感染症、機器の不具合といった可能性は、従来のDBSと同様に考えておく必要があります。また、DBSそのものが向く方(レボドパによく反応するタイプなど)、向かない方があり、適応があるかどうかは、専門のチームによる慎重な評価が欠かせません。「新しいから、より積極的に」ではなく、「自分に合うかどうか」を、時間をかけて相談することが大切です。
まとめ
- DBSは、脳に電極を植え込み電気刺激で症状をやわらげる手術治療。
- 適応型DBS(aDBS)は、脳の活動を読み取り、刺激の強さを自動調整する新しい方式。2025年に世界で初めて承認された。
- 治験では、調子よく過ごせる時間の増加や、生活の質の改善が報告されている。
- 手術をともなう治療であり、適応があるかどうかは専門医との慎重な相談が必要。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的とした連載コラムであり、特定の治療法を推奨・保証するものではありません。手術治療の適応については、必ず主治医・専門医にご相談ください。
参考にした主な情報
・メドトロニック社 BrainSense Adaptive DBS FDA承認発表(2025年2月)
・ADAPT-PD治験結果